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某鯖で、重いんじゃヴォケ(個人的感覚)って話になったので、 自分の好みで入れられるように、微妙なリスト化www 載せ忘れてるツールとか、知らないツールは順次UPしていきます。 ツールの説明等は、各作者のHPを探してみてください うちのbeyondが思い方は、下のbeyondに入れたいのを追加してください。 (アドオンいっぱい並ぶのが嫌で統合したけど、maptoolとか、重いツール入れたくない人もいるようでwww) 3gokushi_beyond : http //www1.ocn.ne.jp/~hatt/3gkb/ ・・・全てはここからはじまりました。hatさん失踪から早何年(><) Lブラウザ三国志用便利機能色々ごった煮 by hatt+ろむ+α : ttp //wescript.net/scripts/23371 Lブラウザ三国志用便利機能色々ごった煮 by hasekun : ttp //wescript.net/scripts/23365 Lブラウザ三国志用便利機能色々ごった煮 by hatt+ろむ+α : ttp //wescript.net/scripts/23362 Lブラウザ三国志用便利機能色々ごった煮 by hatt+ろむ+α, version 1.27.2.7 : ttp //wescript.net/scripts/23360 Lブラウザ三国志 BeyondKAI Ver1.27d (Beyond1.27 by hatt base) : ttp //wescript.net/scripts/23355 ほかにもあったような・・・。じぶんの以外は、どれが、最新になってるかみてませんwww 自動建築スクリプト bro3_auto_bilder.user.js ttp //loda.jp/3gokushi/?mode=pass idd=1499 ・・・beyond統合済&いろいろ改造 クエスト補助 3gokushi-quest-display.user.js ttp //loda.jp/3gokushi/?id=1808 ・・・beyond統合済 右クリック拡張 ttp //loda.jp/3gokushi/?mode=pass idd=1697PW=0000 ・・・beyond統合済 calc_trade_income http //homepage3.nifty.com/Craford/content/tool/bro3_calc_trade_income.user.js ・・・beyond統合済 Trading_support ttp //wescript.net/scripts/23683 ・・・beyond統合済 bro3_score_price ttp //wescript.net/scripts/22492 → ttp //loda.jp/3gokushi/?id=1764 ・・・beyond統合済 bro3_tradecardidview.user.js http //aoyamayuuto.blog92.fc2.com/blog-entry-94.html ・・・beyond統合済 bro3_calcn_all.user.js 通期版 ttp //loda.jp/3gokushi/?id=1599⇒ ttp //loda.jp/3gokushi/?id=1742 ・・・beyond統合済&7期用に改造 bro3-StatLook http //userscripts.org/scripts/show/103881 ・・・beyond統合済 地図ツール http //blog.livedoor.jp/froo/archives/51365945.html L地図ツール(拡張) bro3_map_tool ttp //loda.jp/3gokushi/?mode=pass idd=1166pass=0000 ・・・beyond統合済 タイマー http //blog.livedoor.jp/froo/archives/51423697.html ・・・beyond統合済 同盟貢献チェッカー http //blog.livedoor.jp/froo/archives/51427985.html ・・・beyond統合済 発展チェッカー http //blog.livedoor.jp/froo/archives/51383261.html ・・・beyond統合済 統計グラフ化ツール http //blog.livedoor.jp/froo/archives/51416669.html ・・・beyond統合済 同盟ログツール http //blog.livedoor.jp/froo/archives/51450661.html ・・・beyond統合済 NPC砦、領土情報検索ツール Ver2.45 http //homepage3.nifty.com/Craford/content/tool/bro3_npc_castle_info2.user.js・・・beyond統合済 全体マップ移動距離カスタムツール http //homepage3.nifty.com/Craford/content/tool/bro3_change_move_size.user.js ・・・beyond統合済 都市画面内政武将表示ツール(βバージョン)http //homepage3.nifty.com/Craford/content/tool/bro3_display_adm_info.user.js ・・・beyond統合済 ブショーダス履歴抽出、分析ツール 更新Ver1.06http //homepage3.nifty.com/Craford/content/tool/bro3_put_bosyodas_text.user.js ・・・beyond統合済 討伐・空き地 民兵出現 推定機 5期対応版 ttp //wescript.net/scripts/23489 ・・・beyond統合済&7期用に改造 書簡送信アシスタントスクリプト http //at-n2.net/bro3/bro3_Send_Mail_Supporter.user.js ・・・beyond統合済 書簡同報リンク http //b3gokushi.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-d9f6.html ・・・beyond統合済 書簡保存&検索ツールβ4 http //aoyamayuuto.blog92.fc2.com/blog-entry-34.html ・・・beyond統合済 書簡を4人以上の君主に送ることができるツール bro3_mass_shokan_tool ttp //loda.jp/3gokushi/?id=1485 ・・・beyond統合済 トレード検索条件記憶スクリプト http //b3gokushi.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/3gokushi-757f.html ・・・beyond統合済 トレードその後に 的なスクリプト http //b3gokushi.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/3gokushi-bura3-.html ・・・beyond統合済 ミス防止補助ツール : http //www.losttechnology.jp/JavaScript/userscript/3594warning.html ・・・beyond統合済 ナビゲーションにロールオーバーリンク追加 ttp //loda.jp/3gokushi/?mode=pass idd=1450・・PW[0000] ・・・beyond統合済 右クリック拡張 ttp //loda.jp/3gokushi/?mode=pass idd=1459・・・PW「0000」 ・・・beyond統合済 自動出兵ツール ttp //wescript.net/scripts/22554 http //zapanet.info/blog/item/1942 3gokushiautotroop.user.js ・・・beyond統合済 セッションタイムアウト防止用自動ログイン http //puyomonolith.blog83.fc2.com/blog-entry-19.html ・・・beyond統合済 同盟レベル画面改善ツール http //www.losttechnology.jp/JavaScript/userscript/3594union.html ・・・beyond統合済 武将カード分類ツール http //aoyamayuuto.blog92.fc2.com/blog-entry-40.html ・・・beyond統合済 敵襲チェッカー ttp //loda.jp/3gokushi/?mode=pass idd=2097・・PW[0000] 自動チュートリアル ttp //loda.jp/3gokushi/?id=2048 いろいろ機能が多いです 3gokushi-etcs : http //pkzn.blog.fc2.com/page-0.html 本家鯖メイン用ツール。部分的に貰えないか後日交渉しようかとおもいます 自動出兵 : ttp //loda.jp/3gokushi/?id=1989 bro3_busyodasu.user.js 設定と環境にとっても左右されて使うの断念。 課金ダス封印 : ttp //dowakue.dyndns.info/bro3_no_kakindasu.user.js 課金ボタンを物理的に消去 削除防止 : ttp //dowakue.dyndns.info/bro3_no_more_victim.user.js 間違って削除しないためのツール
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⇒ 標準 beyond使用時 M:地図だけは働きますwww image(http //gyazo.com/dc3f80f71b2fcc2efae4e701dfc0e2c2.png) 鉄材研究所を建設しよう 鉄材研究所を建設する 全資源+1000 石材研究所を建設しよう 石材研究所を建設する 全資源+3000 木材研究所を建設しよう 木材研究所を建設する 全資源+5000 食糧研究所を建設しよう 食糧研究所を建設する 全資源+7000 大練兵所を建設しよう 大練兵所を建設する 全資源+1000 大兵舎を建設しよう 大兵舎を建設する 全資源+3000 大弓兵舎を建設しよう 大弓兵舎を建設する 全資源+5000 大厩舎を建設しよう 大厩舎を建設する 全資源+7000 大兵器工房を建設しよう 大兵器工房を建設する 全資源+10000 建替用チャート(各施設の建設必要時間は3時間。破棄は1時間) 大厩舎1 大兵器作るために必要 石材研究所1 木材研究所作るために必要 施設破壊中はクエストクリアが出来ません! ①鉄材作成→②石材作成→①鉄材破棄→①木材作成→②石材破棄→②食糧作成 ①練兵作成→②兵舎作成→①練兵破棄→①弓兵舎作成→②兵舎破棄→②厩舎作成→①弓兵舎破棄→①兵器工房 経験値ボーナスまとめ (仮/情報募集中) 同盟レベル 必要寄付額 最大同盟人数 人数/寄付額 時短鯖(未確認) 人数/寄付額 経験値ボーナス 特記 1 0 20人 0 40人 0 0.0% 2 30,000 23人 1500 43人 750 1.0% 3 60,000 27人 2609 47人 1396 1.5% 4 120,000 33人 4445 53人 2554 2.0% 5 288,000 40人 8728 60人 5433 2.5% 拠点発生 6 676,800 48人 16920 68人 11280 3.0% 7 1,556,640 57人 32430 77人 22891 3.5% 8 3,502,440 68人 61447 88人 45486 4.0% 9 7,705,370 82人 113314 102 87561 4.5% 10 16,566,540 100 202030 120 162418 5.0% 11 34,789,740 120 347898 140 289915 5.5% 12 69,579,470 145人 579829 (165人) 496996 6.0% 13 135,679,970 170人 935724 (190人) 822303 6.5% 14 257,791,950 210人 1516424 (230人) 1356800 7.0% 15 476,915,100 240人 2271025 (260人) 2073544 7.5% 16 858,447,190 300人 3576864 (320人) 3301720 8.0% 17 1,502,282,570 350人 5007609 (370) 4694634 8.5% 18 2,553,880,380 430人 7296802 (450人) 6902380 9.0% 19 4,213,902,620 510人 9799774 (530人) 9364229 9.5% 20 6,742,244,200 600人 13220087 600人 12721215 10.0% 同盟拠点 施設名 効果 必要同盟員数 必要な施設 鉄材研究所 鉄材生産量+2% 2人 石材研究所 石材生産量+2% 4人 鉄材研究所 木材研究所 木材生産量+2% 6人 石材研究所 食料研究所 食料生産量+2% 8人 木材研究所 大練兵所 練兵所の兵士作成時間減少+2% 2人 大兵舎 兵舎の兵士作成時間減少+2% 4人 大練兵所 大弓兵舎 弓兵舎の兵士作成時間減少+2% 6人 大兵舎 大厩舎 厩舎の兵士作成時間減少+2% 8人 大弓兵舎 大兵器工房 兵器工房の兵士作成時間減少+2% 10人 大厩舎 建設件数まとめ (仮/情報募集中)・・・hasekun探して教えてください 建設可能件数 必要寄付額 前回からの差分 同盟レベル 1 288,000 - 5 2 482,400 194,400 5 3 676,800 194,400 6 4 1,116,720 439,920 6 5 1,556,640 439,920 7 6 2,529,540 972,900 7 7 3,502,440 972,900 8 8 5,603,905 2,101,465 8 9 7,705,370 2,101,465 9 10 12,135,955 4,430,585 9 11 16,566,540 4,430,585 10 12 25,678,140 9,111,600 10 13 34,789,740 9,111,600 11 14 46,386,317 11,596,577 11 15 57,982,893 11,596,576 11 16 69,579,470 11,596,577 12 17 91,612,970 22,033,500 12 18 113,646,470 22,033,500 12 19 135,679,970 22,033,500 13 20 176,383,963 40,703,993 13 21 217,087,957 40,703,994 13 22 257,791,950 40,703,993 14 23 330,833,000 73,041,050 14 24 403,874,050 73,041,050 14 25 476,915,100 73,041,050 15 26 604,092,463 127,177,363 15 27 731,269,827 127,177,364 15 28 858,447,190 127,177,363 16 29 1,073,058,983 214,611,793 16 30 1,287,670,777 214,611,794 16 31 1,502,282,570 214,611,793 17 32 1,765,182,022 262,899,452 17 33 2,028,081,475 262,899,453 17 34 2,290,980,928 262,899,453 17 35 2,553,880,380 262,899,452 18 36 2,968,885,940 415,005,560 18 37 3,383,891,500 415,005,560 18 38 3,798,897,060 415,005,560 18 39 4,213,902,620 415,005,560 19 40 4,845,988,015 632,085,395 19 41 5,478,073,410 632,085,395 19 42 6,110,158,805 632,085,395 19 43 6,742,244,200 632,085,395 20 参考におおざっぱな例を上げておきます。24時間耐久同盟拠点建設 クエスト受注時間は、各施設 完成から破棄開始までの2時間のみで、破棄中は受け付けできません 00 00 鉄材作成開始 03 00 石材作成開始 05 00 鉄材破棄開始 06 00 石材完成&鉄材破棄完了⇒木材作成 08 00 石材破棄開始 09 00 木材完成&石材破棄完了⇒食糧作成 11 00 木材破棄開始 12 00 食糧完成&木材破棄完了⇒練兵作成 14 00 食糧破棄開始 15 00 練兵完成&食糧破棄完了⇒兵舎作成 17 00 練兵破棄開始 18 00 兵舎完成&練兵破棄完了⇒弓兵舎作成 20 00 兵舎破棄開始 21 00 弓兵舎完成&兵舎破棄完了⇒厩舎作成 23 00 弓兵舎破棄開始 24 00 厩舎完成&弓兵舎破棄完了⇒兵器工房作成 これで、厩舎&兵器工房が建ってますので、同盟拠点が増やせるなら資源施設建設へ 間違って厩舎を壊すと、兵器工房建てるまで時間掛かるので、衝車組が泣きますwww
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!-- Start of Amazon Publisher Studio Loader -- script window.amznpubstudioTag = "hasekun-22"; /script !-- Do not modify the following code ! -- script async="true" type="text/javascript" src="http //ps-jp.amazon-adsystem.com/domains/hasekun-22_61ea62a0-e679-4e8e-bd38-24c4884e159e.js" charset="UTF-8" /script !-- End of Amazon Publisher Studio Loader -- テスト版に付ノンクレームでお願いしますw https //www.webfile.jp/dl.php?i=1226507 s=14f12adafb5337aa824e 説明出てるし、資源アイコンもういらないかなー [ 【繰り返し】同盟に資源を寄付しよう , 同盟に合計500以上寄付する , ヨロズダス回数+1], [ 【繰り返し】殲滅戦で資源を獲得しよう , 武将を出兵し、資源を獲得する , ヨロズダス回数+1], [ 【繰り返し】ブショーデュエルに参加しよう , ブショーデュエルに3回エントリーする , ヨロズダス回数+1], [ チャージポイント , CPを利用する , チャージポイント+100], [ 同盟募集機能を使ってみよう , 現在の"同盟への参加状況"を選択する , 小麗チケット+1], [ 他の君主を探そう , 他の君主の拠点座標を調べる , 名声+1], [ 天下統一への第一歩 , NPC拠点の座標を調べる , 名声+1], [ 個人ランク , 統計の総合ランキングの順位を確認する , 食糧資源15%UP(1日)+1], [ 同盟ランク , 現在の同盟ランクを報告する , ブショーダスポイント+100], [ ステータスポイントを振ろう , ステータスポイントを1以上割り振る , ブショーダスポイント+200], [ 内政設定を活用しよう , 内政設定に武将を設定する , ブショーダスポイント+200], [ カード合成 , カード合成を1度行う , トレードポイント+30], [ ブショーデュエルにエントリーしよう , ブショーデュエルにエントリーする , ブショーダスポイント+100], [ 本拠地に名前を付けよう , 本拠地に名前を付ける , 木材・石・鉄・食糧+300], [ 個人掲示板とは? , 個人掲示板にスレッドを立てる , 木資源15%UP(1日)+1], [ 同盟を組もう , 同盟員が5人以上の同盟に加入している , シルバーEXチケット+1], [ 同盟掲示板に書き込み , 同盟掲示板にコメントを書く , 木材・石・鉄・食糧+500], [ 不可侵条約を活用しよう , 不可侵条約を結ぶ , 木材・石・鉄・食糧+500], [ 役職者を任命しよう , 同盟に全ての役職者が赴任されている , ブショーダスポイント+300], [ 書簡の使い方 , 書簡を送り返信をもらう , 鉄資源15%UP(1日)+1], [ アイテムを使おう , アイテムを1つ以上使用する , 小麗チケット+1], [ 同盟員の領地を賊討伐しよう , 同盟員の領地に出兵する , 木材・石・鉄・食糧+500], [ 複数の施設 , 資源の生産施設を2個ずつを建てる , 木材・石・鉄・食糧+300], [ 施設のレベルアップ 其一 , 資源の生産施設をLv2にする , 木材・石・鉄・食糧+300], [ 施設のレベルアップ 其二 , 資源の生産施設をLv3にする , 木材・石・鉄・食糧+600], [ 週間ランキングを確認しよう , 週間攻撃ランキングの順位を確認する , 石資源15%UP(1日)+1], [ 同盟のレベルアップ , 同盟レベルをLv2以上にする , 木材・石・鉄・食糧+1000], [ 寄付をしよう 其一 , 同盟に合計3000以上寄付する , 木材・石・鉄・食糧+700], [ 寄付をしよう 其二 , 同盟に合計10000以上寄付する , 木材・石・鉄・食糧+1500], [ 寄付をしよう 其三 , 同盟に合計50000以上寄付する , 木材・石・鉄・食糧+10000], [ 生産力の強化 其一 , 資源の生産施設を3個ずつ建てる , 木材・石・鉄・食糧+300], [ 生産力の強化 其二 , 資源の生産施設を3個ずつLv3にする , 木材・石・鉄・食糧+1000], [ 生産力の強化 其三 , 資源の生産施設を1個ずつLv4にする , 名声+1], [ 宿舎を建設しよう , 「宿舎」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+100], [ 研究所を建設しよう , 「研究所」を建てる , 木材・石・鉄+100], [ 人口とは? , 人口を25以上にする , 木材・石・鉄・食糧+300], [ 人口を増やそう 其一 , 人口を50以上にする , 木材・石・鉄・食糧+500], [ 人口を増やそう 其二 , 人口を100以上にする , 木材・石・鉄・食糧+1000], [ 人口を増やそう 其三 , 人口を250以上にする , 木材・石・鉄・食糧+2000], [ 人口を増やそう 其四 , 人口を600以上にする , 木材・石・鉄・食糧+3000], [ 人口を増やそう 其伍 , 人口を1000以上にする , 木材・石・鉄・食糧+5000], [ 人口を増やそう 其六 , 人口を2000以上にする , 名声+1], [ 人口を増やそう 其七 , 人口を3000以上にする , 木材・石・鉄・食糧+10000], [ 人口を増やそう 其八 , 人口を5000以上にする , 木材・石・鉄・食糧+25000], [ 人口を増やそう 其九 , 人口を8000以上にする , 木材・石・鉄・食糧+40000], [ 鍛冶場で強化 , 鍛冶場で武器を1つLv1以上にする , 木材・石・鉄・食糧+1000], [ 防具工場で強化 , 防具工場で防具を1つLv1以上にする , 木材・石・鉄・食糧+1200], [ トレードに出品しよう , トレードに出品する , トレードポイント+50], [ 武将を育てよう 其一 , 武将をLv3以上にする , 木材・石・鉄・食糧+800], [ 武将を育てよう 其二 , 武将をLv10以上にする , 名声+1], [ 武将を育てよう 其三 , 武将をLv20以上にする , ブショーダスポイント+300], [ 武将を育てよう 其四 , 武将をLv30以上にする , ブショーダスポイント+800], [ 武将を育てよう 其伍 , 武将をLv40以上にする , ブショーダスポイント+1000], [ 同一スキルでレベルアップ合成しよう , スキルレベルアップ合成を行う , トレードポイント+50], [ スキルの習得 其一 , 武将にスキルを2つ持たせて、デッキにセットする , トレードポイント+50], [ スキルの習得 其二 , 武将にスキルを3つ持たせて、デッキにセットする , トレードポイント+100], [ スキルレベル 其一 , 武将にLv4以上のスキルを持たせて、デッキにセットする , トレードポイント+50], [ スキルレベル 其二 , 武将にLv6以上のスキルを持たせて、デッキにセットする , トレードポイント+100], [ スキルレベル 其三 , 武将にLv5以上のスキルを2つ持たせて、デッキにセットする , トレードポイント+200], [ 複数の武将を育てよう 其一 , 2人の武将をLv4以上にする , ブショーダスポイント+500], [ 複数の武将を育てよう 其二 , 3人の武将をLv5以上にする , ブショーダスポイント+800], [ 内政武将を鍛えよう , ステータスポイントを知力に50割り振る , ブショーダスポイント+300], [ 防御武将を鍛えよう , ステータスポイントを防御に50割り振る , ブショーダスポイント+300], [ 移動速度を鍛えよう , ステータスポイントを速度に50割り振る , ブショーダスポイント+300], [ 盾兵の研究 , 研究所で「盾兵」の研究を行う , 木材・石・鉄+1000、食糧+500], [ 槍兵の研究 , 研究所で「槍兵」の研究を行う , 木材・鉄・食糧+1000、石+2500], [ 弓兵の研究 , 研究所で「弓兵」の研究を行う , 木材+2500、石・鉄・食糧+1000], [ 騎兵の研究 , 研究所で「騎兵」の研究を行う , 木材・石・食糧+1000、鉄+2500], [ 斥候の研究 , 研究所で「斥候」の研究を行う , 木材・石・鉄+2000、食糧+1000], [ 衝車の研究 , 研究所で「衝車」の研究を行う , 木材・石・鉄+8000、食糧+4000], [ 斥候騎兵の研究 , 研究所で「斥候騎兵」の研究を行う , 木材・石・鉄+4000、食糧+2000], [ 大剣兵の研究 , 研究所で「大剣兵」の研究を行う , ブショーダスポイント+2000], [ 重盾兵の研究 , 研究所で「重盾兵」の研究を行う , 木材・石・鉄+25000、食糧+10000], [ 矛槍兵の研究 , 研究所で「矛槍兵」の研究を行う , 名声+1], [ 弩兵の研究 , 研究所で「弩兵」の研究を行う , 名声+1], [ 近衛騎兵の研究 , 研究所で「近衛騎兵」の研究を行う , 名声+1], [ 投石機の研究 , 研究所で「投石機」の研究を行う , 名声+1], [ 倉庫の上限を増やそう 其一 , 資源の最大所持量を5000にする , 木材・石・鉄・食糧+500], [ 倉庫の上限を増やそう 其二 , 資源の最大所持量を10000にする , トレードポイント+100], [ 倉庫の上限を増やそう 其四 , 資源の最大所持量を100000にする , 小麗チケット+1], [ 倉庫の上限を増やそう 其伍 , 資源の最大所持量を300000にする , 小麗チケット+2], [ 倉庫の上限を増やそう 其六 , 資源の最大所持量を500000にする , 大鳳チケット+1], [ 木収入強化 其二 , 「木」の生産量を500以上にする , 石・鉄・食糧+1500], [ 木収入強化 其三 , 「木」の生産量を1000以上にする , 石・鉄・食糧+3000], [ 石収入強化 其二 , 「石」の生産量を500以上にする , 木材・鉄・食糧+1500], [ 石収入強化 其三 , 「石」の生産量を1000以上にする , 木材・鉄・食糧+3000], [ 鉄収入強化 其二 , 「鉄」の生産量を500以上にする , 木材・石・食糧+1500], [ 鉄収入強化 其三 , 「鉄」の生産量を1000以上にする , 木材・石・食糧+3000], [ 領地の取得 其一 , ★1以上の領地を2つ以上取得する , 木材・石・鉄・食糧+500], [ 領地の取得 其二 , ★2以上の領地を取得する , 木材・石・鉄・食糧+1000], [ 領地の取得 其三 , ★3以上の領地を取得する , 木材・石・鉄・食糧+1500], [ 領地の取得 其四 , ★4以上の領地を取得する , 木材・石・鉄・食糧+2500], [ 領地の取得 其伍 , ★5以上の領地を取得する , 木材・石・鉄・食糧+4000], [ 領地の取得 其六 , ★6以上の領地を取得する , 木材・石・鉄・食糧+5000], [ 領地のレベルアップ , 領地をLv2以上にする , 名声+1], [ 拠点を作ろう! 其一 , 拠点(村・砦)を1つ以上作る , 木材・石・鉄+1500、食糧+1000], [ 拠点を作ろう! 其二 , 拠点(村・砦)を3つ以上作る , トレードポイント+250], [ 拠点を作ろう! 其三 , 拠点(村・砦)を5つ以上作る , トレードポイント+300], [ 拠点を作ろう! 其四 , 拠点(村・砦)を7つ以上作る , トレードポイント+500], [ 拠点を作ろう! 其伍 , 拠点(村・砦)を9つ以上作る , トレードポイント+700], [ 拠点に名前を付けよう , 拠点(村・砦)に名前を付ける , 木材・石・鉄・食糧+1000], [ 拠点に武将をセットしよう , 拠点(村・砦)に武将をセットする , ブショーダスポイント+500], [ 施設のいろは , 拠点(村・砦)に施設を建てる , チャージポイント+100], [ 城のレベルアップ 其一 , 城をLv5以上にする , 木材・石・食糧+1000、鉄+3000], [ 城のレベルアップ 其二 , 城をLv8以上にする , 木材・石+5000、鉄・食糧+3000], [ 修行合成してみよう , 修行合成を行う , トレードポイント+200], [ 一戦入魂(新米) , 撃破スコアを100以上にする , ブショーダスポイント+500], [ 一戦入魂(隊士) , 撃破スコアを500以上にする , ブショーダスポイント+1000], [ 一戦入魂(隊長) , 撃破スコアを1000以上にする , 木材・石・鉄・食糧+4000], [ 一戦入魂(大将) , 撃破スコアを3000以上にする , 木材・石・鉄・食糧+10000], [ 一戦入魂(名将) , 撃破スコアを10000以上にする , 木材・石・鉄・食糧+30000], [ 一戦入魂(覇王) , 撃破スコアを30000以上にする , 名声+3], [ 同盟に貢献しよう 其一 , 同盟貢献ポイントを1000以上にする , トレードポイント+30], [ 同盟に貢献しよう 其二 , 同盟貢献ポイントを3000以上にする , トレードポイント+50], [ 同盟に貢献しよう 其三 , 同盟貢献ポイントを6000以上にする , トレードポイント+70], [ 同盟に貢献しよう 其四 , 同盟貢献ポイントを10000以上にする , トレードポイント+100], [ 同盟に貢献しよう 其伍 , 同盟貢献ポイントを30000以上にする , トレードポイント+150], [ 同盟に貢献しよう 其六 , 同盟貢献ポイントを60000以上にする , トレードポイント+200], [ 同盟に貢献しよう 其七 , 同盟貢献ポイントを100000以上にする , トレードポイント+500], [ 同盟に貢献しよう 其八 , 同盟貢献ポイントを300000以上にする , シルバーEXチケット+1], [ 同盟拠点とは? , 同盟レベルをLv5以上にする , 木材・石・鉄・食糧+8000], [ 鉄材研究所を建設しよう , 同盟拠点に「鉄材研究所」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+1000], [ 石材研究所を建設しよう , 同盟拠点に「石材研究所」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+3000], [ 木材研究所を建設しよう , 同盟拠点に「木材研究所」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+5000], [ 食糧研究所を建設しよう , 同盟拠点に「食糧研究所」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+7000], [ 大練兵所を建設しよう , 同盟拠点に「大練兵所」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+1000], [ 大兵舎を建設しよう , 同盟拠点に「大兵舎」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+3000], [ 大弓兵舎を建設しよう , 同盟拠点に「大弓兵舎」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+5000], [ 大厩舎を建設しよう , 同盟拠点に「大厩舎」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+7000], [ 大兵器工房を建設しよう , 同盟拠点に「大兵器工房」を建てる , 木材・石・鉄・食糧+10000], [ 同盟上位への道 其一 , 同盟ポイントを40000以上にする , ブショーダスポイント+300], [ 同盟上位への道 其二 , 同盟ポイントを80000以上にする , ブショーダスポイント+500], [ 同盟上位への道 其三 , 同盟ポイントを160000以上にする , ブショーダスポイント+700], [ 同盟上位への道 其四 , 同盟ポイントを400000以上にする , ブショーダスポイント+1000], [ 同盟上位への道 其伍 , 同盟ポイントを800000以上にする , ブショーダスポイント+1500], [ 同盟上位への道 其六 , 同盟ポイントを1600000以上にする , ブショーダスポイント+2000], [ 同盟上位への道 其七 , 同盟ポイントを4000000以上にする , ブショーダスポイント+5000], [ 同盟上位への道 其八 , 同盟ポイントを8000000以上にする , シルバーEXチケット+1], [ 同盟員とNPC砦を落とそう , ★1以上のNPC砦を陥落させる , 名声+2], [ 難関砦を攻略せよ , ★6以上のNPC砦を陥落させる , 木材・石・鉄・食糧+50000], [ 天下統一の足がかり , ★8以上のNPC城を陥落させる , 木材・石・鉄・食糧+100000], [ 幻のスキルを探せ 其一 , スキル「奇計百出」を持った武将をデッキにセットする , ブショーダスポイント+1000], [ 幻のスキルを探せ 其二 , スキル「八卦の陣」を持った武将をデッキにセットする , 名声+1], [ 幻のスキルを探せ 其三 , スキル「一騎当千」を持った武将をデッキにセットする , 名声+1], [ 幻のスキルを探せ 其四 , スキル「神速」を持った武将をデッキにセットする , 名声+1]];
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Beyond the school gate ※ 夜。 お日さまがお出掛けしてから、また帰ってくるまでの時間。 暗くて、静かで、ちょっと冷たい。それが恐ろしいと震えるひともいるけれど。 あったかいお布団の中で眠るなら、きっとお昼の疲れを癒すことだってできる。空からはお月さまとお星さま の優しい光が降り注いで。その下でかえるとか虫とかが熱烈に愛を歌うのだ。 すてきな時間。そうなのだろうと思う。 けれど。 わたしにとって、夜という時間は、ひどく痛みを伴うものだった。 なぜなら夜は、 ――罪の時間だからだ ――わたしがわたしでなくなる時間だからだ ああ、また、 夜が来る。 ※ 空をジグソーパズルのように切り分けた謎の光と、唐突な視聴覚のノイズ。 先刻の異状は一体何だったのだろう? 足を動かしながら、俺は鞄の底から滅多に使わない携帯電話を引っ張り出す。開閉時の具合とシンプルな外装 が気に入ったという理由で選んだ二つ折り式の携帯電話は、とうに旧型の機種ではあるが過不足ない機能を備え ている。 何を差し置いても、家族の安否が気になった。あれが俺だけの幻覚ならばそれに越したことはないが、そうで ないなら。 携帯電話は、圏外表示になっていなかった。【メニュー】から【電話帳検索】に飛ぶ。【自宅】で登録してあ ったはずだから、サ行か。 見つけた。 ……こんな事態ではあるが、そのすぐ上に、【先崎閑花(サキザキシズカ)】という記憶にない名前が見えた ので、俺は速やかに抹消しておく。 (……あのストーカー、また勝手に俺の携帯電話いじりやがったな) 後輩の後鬼閑花(ごき しずか)とは、昔いろいろあって今もそこそこ親しい間柄であるが、男女としての交 際はきっぱりお断りし続けている。 俺と同じ名字を名乗っているのは、悪ふざけではなく「私としてはこうなるのが理想なのですが、どうでしょ うか?」という一種のアピールだろう。 いじらしいことはいじらしいが、こんなことはさすがに容認しかねた。 (あとで説教だな) 気を取り直して、今度こそ自宅の番号に掛けることにする。 ボタンを押しこもうとしたところで、視界の端に構造物が出現。 ぎょっとして注視すれば、何のことはない、つい先日に錆を落とされた南門の門扉だった。 携帯電話の操作で手元に集中していたせいで、仁科学園正門に到達したことに気づくのが遅れたのだった。俺 としたことが何たる不覚。 さておき。 (やはり、学園前にも。別に、おかしなところは) ない。ないと思う。 あんなことがあった直後だけに、俺は気になってしまう。 普段通りの風景。見ていたって別段面白くもない住宅街を念入りに見渡していき、 「……?」 何かが、ある? 街路灯の光をスポットライトとして浮かび上がる影を目撃した俺は、まず漠然とそれを“異様なもの”として 認識した。通学路の異物。たとえばいつの間にか不法投棄されていた堆(うずたか)い粗大ゴミの山であるとか、 そういうものではないかと思ったのだ。 遠目に見るだけでは形状のディテールは分からないが、全体の印象としては扁平といってよかった。逆光の翳 のためだろう、黒がむやみに濃い。ただしその色は黒ではない。 その正体を確かめようと俺は目を眇(すが)め、 ――ぞっとした。 俺の中に最大の恐怖が呼び覚まされたのは、“それがどうやらひとりでに動いているらしい”ことに気がつい た瞬間だった。 これは、何だ? 機械の類い。――違う。 お前は、誰だ? 猛獣の類い。――違う。 もっと巨大で得体の知れない、生物だった。 体長は目測でおよそ三メートル、もちろんこれは先端の尖った八本の歩脚の長さを含めない。貌にずらりと並 んだ四つの単眼の高さが、恐らく俺の腹とほぼ同じ。 全身燻んだ黄金の肌は、甲虫たちのように鈍い金属光沢を発していた。 その姿はまるで、 (蜘蛛、なのか……?) 馬鹿な。 南米の熱帯雨林に生息するルブロンオオツチグモ、またの名をゴライアスバードイーター。世界最大のクモの ひとつとされるこの種でも、せいぜい体長一〇センチメートル、脚を含めた全幅でも二〇センチメートルほどの 大きさだ。 だが、俺の目の前にいるこいつは、ざっと見積もってもその三〇倍もある。 並の大型哺乳類をも凌駕するこんな図体、節足動物の構造的にも存在が有り得ない。かの有名なタカアシガニ でも鋏脚を広げてやっと三メートル、それも水中での話である。 どう考えてもまっとうな生き物ではない。 (――落ち着け、先崎俊輔(さきざき しゅんすけ)……!) 必要もない知識を引っ張り出して現実逃避している場合か。 何よりまずその危険性を直視せねばならない。 この蜘蛛は、今すぐにでも、俺を獲物と見定めて襲い掛かって来るかもしれないのだ! 遠目にも兇悪極まる蜘蛛の口器は、それが純然たる狩猟者であることを物語っていた。ほとんどの蜘蛛の毒は 哺乳類には効かないが、そんなもの気休めにもならない。牙だけで致命傷となり得る。 大型種のクモともなれば、時にカエルにトカゲ、ネズミさえ捕食する。このサイズなら、“人食い”など当た り前のようにやってのけるだろう。 そして、今の俺はそんな怪物のすぐそばにいる! (まずいな。これは。どうも) 彼我の距離は、二〇メートルに満たない。これをクモの体長の六から七倍に相当すると見ると、かなり際どい 気がする。ここまで足音を立て放題だったのが痛い。無表情だから分からないだけで、向こうはとっくにこちら に気づいて狙いを定めているかもしれないのだ! 俺は、肺腑と心臓の欲求を捻じ伏せ、息を殺した。 クモの視力は種によるが、概ねとても低い。ハエトリグモなどの単眼は物体の形を認識できるていどの解像度 を持つというが、それでも別格だ。もとより虫の視覚とは、動体視力に特化して進化してきたからだ。 クモが最も依存している感覚は、触覚、そして振動覚である。この振動には当然、“音”も含まれる。特に音 を立てた者から見境なしに狩っていく習性を持つものもいる。 ごちゃごちゃ述べ立てたが、つまりこの場は、“闇雲に逃げ出す”よりは“動かない”ほうがいいかもしれな いということだ。 もっとも、人知及ばぬ怪物にそんな安易な手でやりすごせるとは限らない。気休めていどだ。 一層の警戒を心掛けながら、俺はじっと巨大な蜘蛛の様子を窺う。 「……」 ――。 ……眼が合っている、気がした。蜘蛛の無機質な単眼の奥に、こちらを意識しているような不気味な感情が見 え隠れしてはいないか。件の後輩と見つめ合うのと同じくらい、嬉しくないぞ! 背中にべったりとシャツが貼りつく感触がある。唾液を呑みこんで干上がった喉が鳴ることすら、恐ろしくて たまらなかった。できることならこのまま後退りたい。まったくの無音で怪物の間合いから離脱するのだ。そん なことが可能なのか。できっこない。だが、このままでは向こうが俺に興味を持つのも時間の問題だ。 (どうする?) 恐怖で思考がまとまらない。なんてザマだ。 雑用で学園を駆けずり回って知ったあれやこれやを思い出して、俺は必死で打開策を練る。 そんな俺を嘲笑うかのように、蜘蛛は王者の余裕で数歩、街路灯の下から這い出した。 ※ 最悪のタイミングだった。 時刻は深夜零時を回っていて、わたしはわたしでなくなっていた。 目の霞みと耳鳴りに、一瞬だけ意識を奪われて。 気付いた時には、わたしは“外”にいた。 見覚えのない街の中だった。 青い家に黄の窓。痩せ細ったお月さま。団欒の笑い声。近づいて来る誰かの足音。 どうして? だってわたしは、さっきまで部屋の中にいたのに。 誰も傷つけることのないように、“無敵”のあのひとだけを見ていられるように。 なのに。 目の前には、男のひと。どこかの高校生だろうか、知らない制服。 わたしでないわたし、あなたは、また、罪を重ねるの? ――たすけて…… ――わたしをとめて…… ――まもる、さん…… ※ ページ最上部へ
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Beyond the school gate ※ ――時針は、数字の十二と一からほぼ等距離。“お楽しみはこれからだよ”。 ――時刻は、午前零時半にわずかに足りない。“早すぎるんじゃないかな”。 ※ 十数メートルの距離で相対する、巨大な蜘蛛の化け物と、金属の棒を携えた青年―― それは、特撮作品のワンシーンのような、ひどく現実味のない光景だった。 青年の背後で尻餅を突いている俺が一般市民すぎる。いや、それでもいわゆる“今週の犠牲者”になっていな いだけ幸運か。 戦闘の邪魔にならないように一秒でも早くこの場から逃げ出したいところだが、……今ちょっと起てる気がし ない。これが腰が抜けたというやつなのか。うわだせぇ。一般市民以下だな。 「なかなかの大物だな」 青年は口笛を吹くような口調で言ってのけたが、その声に油断の響きは微塵もない。やはり、こういう事態に 慣れている? 「――!!」 蜘蛛が乱入者を敵と見定め、撥条仕掛けとなって跳んだ。成人男性ていどは頭から丸齧りにする口腔は、もは や一個の魔窟だ。 だが、青年は、蜘蛛が動き出すのと同時に、既に地を蹴っていた。 空中に浮かぶ巨体の下に潜り、金属棒を突き上げる。 狙いは、蜘蛛の腹か! だが、あれだけの図体で上を押さえられては、もし腹を突き破れたとしても圧し掛か る死骸の重さに潰される! さらに、蜘蛛は青年を捕獲しようと八つの肢を総動員。それはさながら、地上の人間に覆い被さる野蛮な巨人 の掌。逃れる術はない。 上からは巨大質量、下には大地、前後左右から殺到するのは長槍と見まがう爪牙。 絶体絶命の状況下にあって、最期に垣間見えた青年の口元には、しかし不敵な笑み。 ――燐光―― 信じ難いことに、一瞬、蜘蛛の巨体が、浮いた。 俺の目撃したままを話すなら、青年が金属棒による打突に剛力を乗せて“押し上げた”、でいいのか? ……あの男、本当に人間か!? 青年を刺し貫くはずだった八つの肢は、いずれも標的から上方にずれて金属棒の半ばを挟みこむに留まる。彼 はいわゆるノックバック攻撃によって、同時に回避も行ったのだ。 「……ちょっと足らなかったか」 棒を足場に器用に一躍して距離を取る蜘蛛を見送りながら、青年はパートナーを軽く振ってみせる。 この戦闘――。一合目は青年の判定勝ちといったところか。 もっとも、俺の見た感じ、蜘蛛のほうにも目立った損傷はなさそうだ。跳ぶ動きも憎たらしいほど俊敏。陸上 生物の多くが急所とする腹まで装甲でがちがちに固めていたというのもあるだろうが、狙いを外された足が結果 的に金属棒を抑えるかたちになり、その分威力が減衰したのだろう。 無機質な四連単眼に、にわかに警戒の色が濃くなる。 するする、するする。蜘蛛は青年との隔たりを小刻みに削る。恐る恐るやちょこちょこなどという可愛らしい 動きではない。虎視眈眈と獲物を窺って隙あらば領土を侵犯しようという厚かましい動き。 「させねぇよ」 まどろっこしいのは好かぬとばかりに、青年がにじり寄る蜘蛛へと大きく一歩を踏み出す。 猛者と猛獣の殺傷圏が重なり合い、学園の片隅に時期外れの嵐が巻き起こった。 一帯を薙ぎ払う蜘蛛の前脚は、まさに暴風めいていた。一撃の重さではさすがに怪物の圧倒的有利。直撃すれ ば人類などひとたまりもないだろう。……まあ、あの青年が人間であるかは個人的に大いに疑わしいが、彼にと っても脅威であることは間違いない。事実、青年はまともに“受け”ようなどとは考えず、ひたすら捌きに徹し ている。 そう、青年は蜘蛛の猛攻をうまく捌いていた。人類の反応速度ではどう足掻いても対応できないので、反射的 に行えるようになるまで反復練習した身体操作と先の先の読み合いで戦うとか、そういう次元の話だ。 もちろん、そこに反撃の布石も打たれているであろうことは想像がつく。 八つの歩脚で地上を這う蜘蛛は安定性が高く、致命的に体勢を崩すことは容易ではない。だが、必要な時に必 要な動作を間に合わせないようにすることはできる。 「……ここだっ!」 金属棒が遠心力によって青年の掌の中で滑る。そうやって間合いを変化させるのは、長柄武器の使い手の常套 手段だ。 届かないはずの攻撃が、届く。いわゆる介者剣法の要領で、単眼周りの継ぎ目を抉る狙い。対して蜘蛛は後出 しで反応、辛うじて打点をずらし、一枚甲殻の中央で受ける。 金属棒は、蜘蛛の顔面で撥ね返るような動きをした。効いているようにはまるで見えない。 だが。青年は貌色ひとつ変えず、その弾みをそっくり追撃に流用する。切り上げられた金属棒が、青年の腕の しなりで鞭のように加速、さらに螺旋運動を通して“突き”に変化。再び蜘蛛の眼窩を目掛けて射出された。 堪らず蜘蛛が歩脚を左右側で逆に動かし、戦車でいう超信地旋回を敢行。急所を避けるが、横っ腹への衝撃で 巨体が揺らぐ。 動きの止まった今になって気づいたが、カウンター気味に青年の肝臓に伸ばされていた蜘蛛の爪を、彼は金属 棒の手元の部分で遮っていた。かの武器には、それができるほどの長さがある。 目まぐるしい攻防に、俺のほうはまったく付いていけてない。援護射撃に石投げちゃってもいいんだが、何か 余計なことをするとかえって場が荒れそうで怖い。 流れが青年にあると察した蜘蛛は、さらに畳み掛けようと攻撃態勢を整える青年の射程範囲から急速離脱を図 り、八つの肢を撓(たわ)めて筋力を溜める。 「させるかよ!」 だが、見す見す退避を許す青年ではない。 ここから先は、俺の理解をはるか超えていた。 何の幻か。 “光”が。 夜蛾じゃれつく外灯すら霞む光源が、地上に出現。青年と金属棒が燐光を帯び、夜の闇を討ち祓う。 金属棒の表面全体にひと際強い白光の線が引かれていき、それらは精緻な幾何学模様を形作っていった。 ――奇跡を行う魔法使いが描くという魔方陣のようであるが、 ――プリント基板の上を整然と走る電子回路のようでもある。 体系化された技術を想わせる中にも、我らが不可能を可能とする不思議な要素があると分かる。発見されざる 極微の粒子、あるいは波動、そういう何か。 「“異形”ならざる異形のもの」 金属棒の先端から、莫大な光が迸る。 白い光は“本体”に劣らぬ確かさで実体化し、刃渡り二〇〇センチメートル、身幅五〇センチメートルの巨大 な刃となる! 全体としては馬上突撃槍のようなシルエットだが、れっきとした諸刃の剣だ。芸術的な機能美に、ある種の神 々しさをすら感じさせる、流麗な金属の刃。どう考えても棒より刃のほうがでかいよな、などという考察が馬鹿 らしい。 青年はむしろゆっくりとその切っ先を上空へ向け、 「――粉砕してやる」 落雷と見まがう斬撃が発動。 輝ける処刑人の刃が怪物へと落ち、目映い光が一帯を制圧。 それは、“光の爆発”とでもいうべき圧倒的破壊現象を引き起こす。視界に灼きつく閃光、思わず体が強張る 地響き。赤褐色の煉瓦が砕かれて吹き飛ぶのがちらと見えた。 「……」 たぶん、つかの間の静寂。耳鳴りのせいでよく分からないからたぶんだ。 巨大な刃を振り下ろした青年の足元から前方へ、大地にはやはり巨大な割れ目が刻まれていた。氷原の裂縫の ような奈落の暗さは、時間帯のせいなのか、傷の深さのせいなのか。どうであれ、地面を切り裂くなど、常軌を 逸しているとしか言いようがない。 「えー……」 もう笑うしかない威力だが、笑えない。全然笑えない。これ以上こいつらに本気を出されると俺たちの学園が 倒壊する。『学園を壊しませんか?』……どこのキャッチコピーだ。やめろ! いや、そんなことより、蜘蛛は……!? 「いない……?」 艶のない黄金の巨体は、悪寒を催す威圧感ともども消滅していた。……逃げた? まさかあのタイミングで仕 留められなかったというのか? それは、まずい。 完全に役立たずの俺がいうのも何だが、今後どれほど犠牲者が出るのか想像もつかない。日本獣害事件史に残 る三毛別羆事件のような惨劇を連想する。不吉にすぎる未来予測に、俺の顔からは血の気が失せていただろう。 「ぎりぎり間に合った」 “逸らすのが”―― 一方、青年の吐いたのは安堵の息だった。 蜘蛛への攻撃を、“わざと外した”と言ったのだ。 意味が分からず、俺は青年の視線を辿って、地面の亀裂を見る。より正しくは、その左隣。 そこに小さな人影。 ――女の子が倒れていた。 小柄な体格から、恐らくは小学校中学年以上、齢一〇歳ていどと見た。可憐な少女。長く綺麗な黒髪が無骨な 煉瓦の寝台の上に散らばるさまは、奇しくも彼女が蜘蛛の巣に囚われているかのように見えた。 青年がこの女の子に必殺技をぶちこみ掛けて慌てて太刀筋を曲げたということは理解できたが、……どういう ことだよ。 (蜘蛛が消えて、女の子が現れた?) とてつもなく単純に考えれば、この子があの化け物の正体だということになるが? ひとつも他の可能性を考 えられないというわけではないが、シチュエーションとして自然なのはそれくらいしかない。 しかし、んなアホな。それじゃ質量保存の法則が…… (……ふっ……) 馬鹿馬鹿しい。 ことここにいたって、俺はこの件について科学的な説明を求めることを完全に諦めた。……まあ今更という気 もするが。“そういうもの”として受け入れた上で、今後をどうこうするのか考えるほうがまだしも精神衛生上 よいだろう。 (ていうか俺、もう帰っていいか? だめか) ……じりりりりりりぃぃ…… 我関せずとやかましく騒ぎ始めるヤブキリたちの草木に半眼をくれてやりながら、俺は空を仰いだ。 どうしてこんなことになってしまったのだろう? 月は……まだ赤い……。 ※ ページ最上部へ
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Beyond the school gate ※ 先崎俊輔が九死に一生を得ていたころ―― その“後輩”であるところの少女、後鬼閑花(ごき しずか)は商店街の書店でファッション雑誌を立ち読み していた。 (浴衣と和ゴス……先輩はどっちが好みなのでしょうか) 柚鈴天神社の夏祭りは、愛しの先輩と回ることに決まっていた(彼女の中では)。 今の二年生の卒業までは、あとざっと二〇ヶ月。ただでさえ大学受験も控えているのに、そろそろたらしこま なければラブラブイチャイチャする時間が減ってしまう。だだ減りである。 学園で顔を合わせる機会がなくなってしまう夏休みだが、後鬼閑花にとってはむしろチャンスといえた。実家 に押し掛けてご家族の覚えをめでたくすればいいじゃない? (上品で清楚なのも捨て難いですが、やっぱりひらひらのフリルやレースは男の子の憧れです。ピュアさの中に 香るほのかなエロさ。さすがの先輩といえど、辛抱堪らずむしゃぶりついてメチャクチャにピ――(自主規制) さずにはいられないはず) いまいち反応が鈍いようなら途中で中座してお色直しすればいい。今時、変身ヒーローだって敵の特性に合わ せていくつもの姿を使い分けるのだ。その分野で女の子が遅れを取るはずがない。 (……待てよ? 意表を突いて巫女さん風というのもありでは? ちょうど神社の縁日なのだし) 罰当たり気味な選択肢を追加しておく。巷の噂によれば、コスプレ業界には膝丈の袴や腋チラの着物もあると かないとか。 思い浮かべるのは、柚鈴天神社の娘である神柚鈴絵の、白衣に緋袴を纏った姿。先崎とそれなりに親しげに話 していたというだけのことで、後鬼閑花は彼女に対して勝手に敵意に近い対抗心を抱いている。 (先輩がどんな特殊な性癖をお持ちでも、この閑花ちゃんはばっちり対応しますよ。神聖な巫女さんをぐちょげ ちょに汚したいなら巫女さん後輩に、正義のヒロインと秘密のお付き合いがしたいならキュア後輩に、街を恐怖 のずんどこに陥れたいのなら重機動メカ後輩に、けなげにフォルムチェンジ) いつか言ったようなことだったが、今回は心の中に留めおく。 (……どうです? ここまでしてくれるカノジョなかなかいないですよ) 後鬼閑花が得意気に鼻から熱っぽい息を抜いたその時だった。 (――あれ?) 世界が、ぐらりと。 視覚の画素と、聴覚の音素が粒子状になって撹拌されていた。 革靴越しの足裏の感触が不安定になり、また時間の刻みも分からなくなり、確固たるものと思われた自分の立 ち位置を見失う。 (これは噂に聞く……つ、つわり……? 先輩ー!! だから●●してってあれほどお願いしたのにー!!) バカな発想は、わりと心の余裕があったというよりは、ある種の現実逃避なのかもしれなかった。 ……先崎俊輔の名誉のために一応念を押しておくが、これは彼女なりのジョーク(下品)であり、話題のふた りがそういう行為に及んだ事実はまったくない。どういう行為かというと、知らないきみは知らないままのきみ でいて欲しい、そういう行為である。 目と耳の中で点と点が結びついていき、後鬼閑花が世界との関わり合うための術を取り戻すと、周囲の風景が がらりと変わっていた。 「――え?」 そこは先ほどまでいたはずの商店街ではなく、見知らぬ荒漠たる“河原”であった。 風雨と流水に削られ磨かれてきたと思しき大小の岩石とまるで粒の揃わぬ砂利のために、歩くにもそう容易く は平衡を保てまい。 浅瀬の石を流水が濯ぐ音。目の前に横たわる川は、たっぷりと水を湛えていた。霧のために対岸は見晴るかせ ないが、幅の太いことは直感的に分かった。後から後から押しよせるその流れは、悠久の歳月を感じさせる。薄 っすらとした潮の匂い。きっと海もそう遠くはないのだろう。 思わず仰いだ空はどこか不思議な色で、少女をひどく落ち着かない気分にさせた。 これは“よくない状況”だと本能は訴えている。 (しかし、こういうときこそ冷静になるべきです閑花ちゃん。先輩だってきっとそう言うハズ!) 気味の悪い動悸を抑えるように深呼吸を一回、二回。肺腑の中を換気すると、閉塞感が多少は和らいだ。 (さらに素数とか数えちゃいます。頭いいです。〇、一、一、二、三、五、八、一三、二一、三四、五五、八九、 一四四、二三三……) しばし待ってみるが、先輩からの打てば響くようなツッコミはなかった。 「……フッ。素数がどういうものだったか忘れてしまうとは、この閑花ちゃんともあろうものが、どうやらそう とう混乱しているっぽいですね」 ちなみに、彼女が素数の代わりに唱えたものを、フィボナッチ数列という。 現実から目を逸らすのも大概にして、後鬼閑花は改めて周囲を見渡してみることにした。 差し当たって探すのは人工物である。人間不信気味の後鬼閑花といえど、さすがに川と石ばかりの空間という のはいかにも心細い。 それらしいものは何もない。 だが、視野を補うためにその場でくるりと一回転してみたところ、革靴の先が何かを蹴飛ばした。 「あら?」 石ではない、木だ。爪先の感触は、その物体が空洞であるらしいことを伝えていた。わずかな金属音もしたよ うな気がする。 拾い上げてみれば、それは木製の小さな箱だった。“ハンドル”のついた用途不明の木箱。手回しの鉛筆削り かとも思われたが、それらしい穴なども見られない。そもそも何でこんなものがここに? 何となく気になって、ついハンドルを回してしまう。 「――――エレキ、キテルノ……!」 無意識にそんな言葉を口走っていた。 「……ハッ!? わ、私はいったい何を……!? も、もしやこれは、快感の電気をびりびりして、女の子をア ●顔レ●プ目の愛玩人形へと変えてしまう魔法の箱!?」 ひとしきり騒いだ後、後鬼閑花はまじまじと得体の知れない拾得物を鑑定した。 「これ、もしかしたら、“エレキテル”、というやつでしょうか?」 後鬼閑花たちの世界においても江戸時代の日本にオランダから伝来し、平賀源内という男が再現した摩擦起電 機がある。 もっとも、今彼女が手にしているものは、坂上匠たちの世界で、ある天才がささやかな悪ふざけのためにこさ えた品だった。 製作者の意図はともかくとして、このエレキテルにもやはり超常的でいかがわしい機能など全くない。ないの だが、後鬼閑花の反応を見るに、あるいは変態たちの間で何やら官能的な感応があったのかもしれない。 「……もし私が先輩の目の前でこれをクルクルして、エレキキてしまったら?」 新しい夜の玩具を手に入れた後鬼閑花の妄想は、留まるところを知らなかった。 にへら。嫁入り前の娘の口元が、だらしなく緩んでいく。にへら。 「電気の力ですっかり無防備になってしまった閑花ちゃんを見たら、先輩といえど果たして理性を保てるもので しょうか……?」 これこそ最も単純で美しい電気回路! (そうと決まれば一刻も早く先輩に会って誘惑してみなければ……!! 先輩待っててくださいよー。あなたの 閑花ちゃんが参ります!) 先ほどまでの不安は何だったのか。ロクでもない算段を立てながら、後鬼閑花はエレキテルを宝物のように抱 き締めてうきうきと歩き出した。特に意図もなく、目指すは上流。どうせ地球は丸いんだ。恋する乙女がゆくの なら、どれも愛する人へと通じるに決まっていた。 浮かれきっていた少女には知る由もない。 この河原こそ、混ざり合ってしまったいくつもの世界のうちのひとつ、〈地獄世界〉は“三途の川”であると いうことなど。 ※ ひと呼吸ばかりのわずかな沈黙に、肩に立て掛けた金属棒の重さを強く感じる。 「世界が混じり合った……?」 制服の少年は、俺の話を聴いて困惑げに眉をひそめた。 無理もない。すぐに理解するには突飛だし、やたらに話が大きい。そうそう実感など伴わないだろう。 俺にしても“前例”があるから当然のようにこんな荒唐無稽な推測を打ち出せているわけで、なかなか初見で 「ハイそうですか」といくものではない。 「それは、どういうことですか?」 一笑に付されるかとも思ったが、少年の反応は取りつく島もないというほどに否定的なものでもなかった。も ちろん内心までは分からないが、こちらへの猜疑心や不信感をあからさまに表に出すようなことはしないだけ、 人間ができている。 先崎俊輔と名乗ったか。ここは、人名まで俺たちの日本と変わらないらしい。学校の生徒らしいし、年齢は十 代半ばから上で確定だろう。いかにも真面目で誠実そうな印象だが、歳のわりに落ち着きすぎても見える。 けれど、まあ、どこをどう切り取ったところでただの一般人であることには変わりない。事態についてざっと 注意喚起を促して、早めに解放してやるべきかもしれない。 「ああ。今、俺の世界と、きみたちの世界は、モザイク状になっているみたいだ」 「……申し訳ない。いきなり口を挟むようですが」 概観から説明しようとしたところ、先崎が割って入った。 「まず、あなたは本当に、自分にとって異世界人なのですか?」 そこからか、と思う一方で、そりゃそうだよなぁ、とも思う。 恐らく、先崎にとっては、“未知との遭遇”といえるような事件は今回が初めてなのではないか。 世界が混ざり合ったという現象に納得する以前に、世界はひとつではないことを理解しておかなくては話に付 いていけないのも無理はない。 これは異世界間交流なのだ。互いに常識が常識ではないかもしれない。 なまじパッと見は同じ日本人である分に、これは意識しておかなければ容易に混乱を招きそうだった。 「うん。異世界人ということになるみたいだな」 俺は殊更きっぱりとした口調で言い切った。 その点に関してはよほど確信があったが、「みたいだ」といったのは先崎の常識に対してワンクッションを置 いてやるためだった。 「……そうだな。それじゃあ、俺の世界のことを語ろう」 ――それは、神秘の元素に満ちた日本の話だ。 ――それは、異形の怪物が蔓延る天地の噺だ。 ――それは、鋼の武器と魔法の全盛期の譚だ。 キーワードは、《魔素》と、異形と、魔法。 俺たちの世界と、先崎たちの世界。果たしてどこまで共通点と相違点があるか、これで炙り出す。 ※ つづく ページ最上部へ
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Beyond the school gate ※ ――時刻は、午前零時を回ったところ。“もう目覚める時間だよ”。 ――時針は、七と八のちょうど真ん中。“まだお休みの時間だよ”。 ※ わたしの生活のリズムは、“能力”の影響を強く受けている。ふつうのひととは、少し違う。 まず、日の出から日の入りの一時間ほど前まで。日中、わたしはまだしも人間らしくいられる。もうひとりの わたしは眠っている。 夕方。わたしは強烈な眠気に襲われ、そのまま日付が変わるころまで完全に意識を失ってしまう。もうひとり のわたしは、まだ休んで力を蓄えている段階だ。 午前零時から日の出まで。わたしともうひとりのわたしが目覚める。ただし、わたしの肉体は“能力”によっ て狂暴な化け物に変貌していて、精神も目を覚ましたもうひとりのわたしに乗っ取られている。 もうひとりのわたし。 それは“蜘蛛”。 それは“怪物”。 チェンジリング・デイと呼ばれる日、地球に降り注いだ隕石がわたしにもたらした異能のひとつ。わたしの意 思などお構いなしに、天体運動の影響によって確実に発動する、人知及ばぬ捕食者への変身能力。 なまなかな戦闘系能力者をも一蹴する剛力と強靭さ。その性は獰猛凶悪で、知能も人類並。 人間など、獲物か玩具としか思っていない。わたしの世界で一番大切だったひとたちをさもうまそうに食い殺 し、わたしの世界で一番大切なひとにすら囓りつく。 どうすることもできない。わたしには。夕方までに一夜の孤独を探し、誰も傷つけないことを祈り、あとは太 陽を待ちわびるだけ。だった。“無敵”の能力で、一晩中、もうひとりのわたしの爪と牙を引き受けてくれるあ のひとと出会うまでは、そうして各地を転々と渡り歩いていた。 (衛さん……) そして今、また、そばにあのひとはいない。はぐれてしまった。久し振りのひとりぼっち。誰かを傷つけてし まうという恐怖に震える。 陽射しを焦がれる夜は、長すぎる。 (今は、何時だろう?) そんなことばかり考える。この高校の近くに飛んだ(飛ばされた?)のが、変身して数分後、午前〇時一〇分 前後だったはずだ。 それから、運悪く遭遇した高校生のお兄さんにもうひとりのわたしが襲い掛かって、そのひとはどうにか逃げ てくれたのだけれど、……潰れた時間としては二時間くらいは経っているだろうか。一時間半、せめて一時間。 夏の日の出を朝の五時くらいとして……あと四時間も? もうひとりのわたしは、高校生のお兄さんが逃げていった木々の奥をじぃっと見ていた。 ――“そうでなくては、面白くない” それは人語ではなかったけれど、感情の波でもうひとりのわたしが昂揚していることがわかった。 このところ“歯応えのありすぎる”能力者をしゃぶってばかりだったから、いい声で鳴いてくれてお腹に溜ま りそうな獲物を見つけてご満悦なのだろう。おまけに無駄な抵抗までして楽しませてくれる。 (そういえば、あのお兄さん) チェンジリング・デイ以降、まだ覚醒しないひとも稀にはいるけれど、“人類総能力者”の時代。 立ち向かってこなかったことから見るに、あの高校生のお兄さんの能力は、恐らく戦いに応用できるようなも のではないのだろう。……わたしにわからないだけで地味に発動していたのかもしれないが、とにかく戦おうな どと考えず逃げてくれたのは本当に幸いだったと思う。なまじ戦う能力があると、かえって危険な目に遭わせて しまう。 もっとも、反則級の能力者ならば、もうひとりのわたしの暴虐も止められるかもしれないが。 それこそ。 ――衛りに徹する限りにおいて、我が身に害をなす一切を跳ねのけるという無敵であるとか。 ――細胞の活性化により無限の身体能力と回復能力を得るという路地裏の女騎士であるとか。 しかしそんな規格外の能力者は、この時代においても決して多くはない。そもそも宇宙からの贈り物は、戦闘 向きのものばかりでもない。 (どうか) 今のわたしには祈ることしかできない。 あれ以上の怪我なく逃げのびてくれるなら何でもよかった。強力な能力者が来てくれるとか、頑丈な建物に滑 りこんでくれるとか、日の出を迎えるとか、もうひとりのわたしが気まぐれに興味を失うとか。 もうひとりのわたしは、やはり蜘蛛のような八つ足を蠢かせて移動を始めていた。きっとあのお兄さんを見つ け、嬲り殺しにするために。 ※ まだ目がちかちかしていた。うっかり携帯電話なぞ直視してしまったからだ。頭でっかちにいろいろ考えるは いいが、肝心な時に詰めが甘いから困る。 獣ならざる我が身、落葉の層を踏み締めて歩くのに、まったくの無音とはいかない。まして、推定される蜘蛛 の聴覚感度を考えれば。 それでも俺は気持ちだけでもと深く静かに潜行する。 (人工林の中を北上し、西門から抜ける。狩人に回りこまれていれば速やかに引き返す。定期的に電波状況を確 認し、回復していれば即時通報を図る) ごく常識的な行動指針のはずだ。 一歩……また一歩……と道路掃除夫ベッポみたいに進むうち、むやみに巨大な体育館に突き当たった。せいぜ い数分。それほど時間が掛かるものでもない。 人工林の端と体育館との間には、やはり煉瓦敷きの歩道が伸びている。正面の大通りよりわずかに細いが、こ れも東西の門に通じるのでそれなりに幅はある。これを横断するわけではないとはいえ、見晴らしが利くという のは俺にとって面白い要素ではない。 藪陰から視線を水平移動。 心音のペースがまた速くなっている。 (蜘蛛は今、どこにいるのだろう) 鬼ごっこで一番怖いのは、鬼を見失った時だ。小学生の頃に読んだシートン動物記のオオツノヒツジ“クラッ グ”の話でもそう書いてあったはずだ。……もっとも、さっきのようないきなりの接近遭遇の場合、追跡者の位 置の把握なんかにまごまごしていたら、今頃は閻魔大王のむさい髭面を拝みながら自分の罪を数える羽目になっ ていただろうが。 ……見渡した限りはいなさそうだが、この位置からでは死角が多すぎてまったく安心できない。 なんか漫画的なパワーを持つ武術の達人ならば殺気を察知して索敵できるかもしれないが、ただの模範的なだ けの高校生にムチャ言うなよ。 生まれながらの捕食者に本気で息を潜められては、はっきり言ってお手上げだ。 悩むだけ時間の無駄なので、俺は人工林の中を動き回り、限界まで死角を削っておく。 ……やはり、いない。と思う。そう信じたい。 まさにブッシュに隠れている側の俺のほうがアンブッシュを警戒しているというのが少し可笑しい。……いや、 どうでもいいな。 決断する。 (やはりここは速やかに西門をくぐろう) ……言うまでもないが、別に学園の敷地内を出たからといって、そこで蜘蛛がすっぱりと諦めてくれるわけで はない。もし見つかれば、どこまでも追い掛けられて美味しくいただかれるだろう。 だから、最終的な目的地は“交番”だ。そこに着くまでは油断できない。 俺は呼吸を細くしながら、するりと樹木たちの砦を抜け出した。靴裏を押し返す地面の硬さ、剥き出しの腕を 撫でてゆく空気の流れ、冷ややかな月光。 西門をひどく遠くに感じる。 それでも取り敢えずの安全圏を離れてしまえば、このまま行くしかない。ゲートを越えて、たとえ“ほら吹き 男”と謗られようとも、あの恐るべき怪物の危険を知らせなくてはならない。夜明け前よりも早く、出歩いた誰 かが襲われないうちに。 閉ざされた鉄のフェンスの形がはっきりと見える。 あと少し、もうすぐ、この先、あれを乗り越えて……! ――勝ち誇ったような四つの単眼が、西門前で俺を待ち受けていた。 「な……!?」 蜘蛛だった。 やはり、どこかに隠れていたというのか? アシが速すぎるために、どこにいてどういうルートで出現したの かまるで見当もつかないというか見当なんてつけている場合か! 無拍子の速さで、蜘蛛の巨大な口腔が、トンネルのように俺を呑みこもうとする。人類はこれを躱せない。反 応して左右に身を振ったとしても、抜け目なく伸ばされた前肢によって口の中へと掻きこまれるだろう。 ――逃げ場は、ない! そうして俺は、頭から闇に丸齧りに―― ※ ――絶望の闇を薙ぎ払い ――それを打ち砕く光がある! 死をさとった俺の前で、ふたつの金属が激突していた。その瞬間を視たわけではない。ただ、クラッシュ音と でもいうべきものがあった。 「そこの君、無事か!?」 呼び掛ける声。 俺には、一瞬、それが人の声だと分からなかった。どうやら、それだけ自分が直面した“死”というものに衝 撃を受けていたらしい。しっかりしろ、そんなことは後でもできる! そこでようやく、九死に一生を得たと自覚できた。 助かったのだ。絶対に死んだと思ったものが。 ――蜘蛛の思考発動からの転瞬、俺の眼前に割りこみを掛け、怪物の爪牙を捌いた者がいる! 俺を絶体絶命の窮地から救ってくれた何者か。今も俺を守って蜘蛛と相対する男だ。 後姿のシルエットは細身のくせに、やけに幅広に思える背中だった。シャツ一枚を通してもわかる鋼の体は一 見して、マウンテンゴリラが百年を生きて変化したと噂されるうちの美術教諭や、仁科最強候補の一角たる重量 挙げ部の筋肉たちのようでもあるが、しかし纏う何かが決定的に違っている。まるで、御伽噺の戦士のような。 (誰だ?) まるで見覚えのない青年だった。知る限り、仁科の体育教諭ではない。 力強い手には、長大な“金属の棒”を握りこんでいた。まさか、あれで蜘蛛を薙ぎ払ったのか? 棒。あるいは杖、棍、柱……。それもどうやら俺の見慣れているような、バレーボールや棒高跳びで立てる体 育用具の鉄棒などではない。 ――あれは、敵と戦うためだけに生まれた、正真正銘の“打擲武器”だ! 予期せぬ乱入者に、さしもの蜘蛛も跳び退く。 「“異形”――いや、《魔素》を感じない。やはり異世界……!」 いぎょう? 青年の唇から零れた耳慣れぬ単語を俺の耳が拾う。“異形”。それが、この蜘蛛の、人知及ばぬ怪物の名前な のか? ――突然の天変地異。“異形”というらしい蜘蛛の怪物。金属の棒を携えて戦う謎の青年。 ――いったいこの街に何が起こっているというのだろう? ※ ページ最上部へ
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Beyond the school gate ※ ――“異形世界”においては。 西暦二〇XX年、局地的な地震の多発により、日本列島が罅割れた。 国土を網羅する未曾有の震災は全てを引き裂き、復興の遅滞は日本の文明を中世の水準にまで退行させること となる。 機能麻痺から回復できないでいた中央政府に見切りをつけた各地方都市は自治権獲得を目指し、防衛のための 独立武装隊を組織。政府はこれを黙認せざる得なかった。 さらに国連による特別危険地帯指定を経て日本は鎖国に乗り出し、ついに海外との交流を断絶。 大震災からおよそ一五年間の出来事である。 ところで、日本が特別危険地帯指定を受けたのは、災害の頻発だけが理由ではない。 “異形”の出現である―― ――“異形”とは。 地震により生じた地割れから噴き出すように出現した、異形の物たち。 地上の生物など比ではない大量の≪魔素≫を保有する、怪物たち。 硬い甲殻を持つ物、軟体の物、脚のない物、肢の多すぎる物、矮小な物から巨大な物、複数の動物の特徴を併 せ持つ物、あり得ざる体色の物、群れをなす物、単独で行動する物、空を飛ぶ物、地に潜る物、海に棲む物、人 類を凌ぐ知能を誇る物―― それらは多種多様であり、地上の虫鱗介禽獣人などと似て非なる形態と生態を持つ。多くは本能のままに人間 を襲い、震災の混乱を助長した。 第一次・第二次掃討作戦を経て、都市及びその近郊に跋扈していた異形は殲滅ないし撃退され、またその根源 と思しき出雲黄泉比良坂も厳重に封鎖されてはいる。だが、依然として、野にある異形の物が人里を襲撃するこ とは珍しいことではない。 人々は都市の周囲に外郭を築き、武装隊を編成し、時には知性のある異形と条約を締結して、懸命に日々の安 寧を得ようとしていた―― ――≪魔素≫とは。 異形の物たちの出現と前後して発見された、一種の根源物質。元素。 それまで検出手段がなかっただけで、人類を含むあらゆる生き物は本来的に体内に持っていたものである。 とはいえ、大気や水の中にもわずかに存在が確認されたことから、単純に生命力の一種などとして捉えてよい かは未だ意見の割れるところである。中国の思想でいう“氣”の概念に近しいという者もいるが、その詳細につ いては今後の研究を待つしかない。 ――魔法とは。 ≪魔素≫の利用は、既存の科学技術とは異なる接近方法から、地球人類文明の限界を拡張し得る可能性を秘め ていた。 安部―― 蘆屋―― 小角―― 平賀―― 玉梓―― かくして五つの天才が、人知及ばぬはずの元素の振る舞いについて独自に理論を構築し、同じ数だけの魔法体 系を確立した。 ≪魔素≫を励起、指示術式などにより再現性のある現象に誘導する。≪魔素≫はここで初めて可視化し、自然 界への干渉能力を持つようになる。 指先から火を熾し、流水を恣に操り、砲撃を上回る拳を繰り出し、掌の中で鋼の武器を鍛え、異空間に通ずる 門を開く―― すなわち、“魔法”。 もっとも、人類の持つ≪魔素≫は、異形たちと比べればごく微量な上に個人差も極めて大きい。訓練によって ある程度までは機能の増強が認められるが、保有量や制御における先天的な個人の資質はやはり無視できない要 素ではあった。 それでも魔法は人類が有史以来初めて手にした超常の現象であった。その力は、第二次掃討作戦で異形に対し て初めて発揮されることになる―― ――≪魔素≫と異形について。 あらゆる生き物が≪魔素≫を外界から吸収もしくは代謝により産生しているが、その活用に関していえば異形 はやはり別格である。 ≪魔素≫の莫大量と高濃度が異形という存在を規定するといってよい。たとえば原始的な生物が有毒な酸素を 利用してエネルギーを得たように、つまり大地の裂け目の奥の異界だかにおいてそういう進化を遂げてきたもの が異形であるのだと唱える研究者も少なくない。それはしばしば、その名の由来となったはずの形態の特異性な どよりも、異形を異形たらしめる要素といえた。 一般に強大な異形ほど≪魔素≫が多く、濃く、その制御活用に長ける。 ※ 気を失った少女と金属棒をいっしょくたに両腕で抱えて、流しの速さで走りながら、坂上匠(さかがみ たく み)青年は思い出していた。 それは、坂上匠の生きていた世界において、極東の島国が歩んだ歴史の一端であった。震災を境にして、多く のものが変わったのだという。ことなるかたちに。 この異世界、いや正確を期すならこの“学校”と思しき施設のあった世界というべきか、ここはどんなところ なのだろうか。 差し当たって考えるのは、身の安全の確保だった。 早々にあんな“大物”と戦闘することになっただけに、それなりに危険な世界なのかもしれない。 怪物。異形ならざる異形のもの。蜘蛛のような。 あれだけの戦闘能力を誇る異形ならば発散するそれなりの≪魔素≫を感知できたはずで、まったく別の生き物 である。 もしもこんな化け物がうじゃうじゃいるようなら…… (まずいよなぁ……) 青年は金属棒の端を一瞥した。 金属棒。魔棒とも。坂上匠愛用の武器であり、“墓標”という不吉な銘を持つ。 ただの鋼の棍棒ではない。魔法体系を確立した五派閥の一の長である平賀老が開発したそれは、≪魔素≫を効 率的に運用する機能を備えていた。 (……≪魔素≫の伝導率も落ちてるみたいだし……) 先の蜘蛛の怪物との戦闘で刃を形成した際、従来に数倍する≪魔素≫を金属棒に注ぎこんだにも関わらず、想 定していた長さに達しなかった。何かの不具合だろうが、実は匠にはあまり細かな調整はできない。 (ついこの前、爺さんに直してもらったばかりだってのに) まるで修理前に時が巻き戻ってしまったかのようだ。 ちなみに使用分はほぼ還元されないので、今の坂上匠は深刻な≪魔素≫枯渇状態にあった。体力と同様に時間 経過で回復するとはいえ、それを待たずに、目覚めたこの少女や別種の怪物たちと連戦することにならないとも 限らない。 怪物から変身した少女を連れていくかについては少し悩んだ。寝首を掻かれる危険は、とてもではないが、な いとは思えない。 しかしあのままにしておいてはいけないという強烈な保護欲のようなものに駆られ、気がついた時には抱え上 げていた。彼女を野放しにして他の誰かに被害が及ぶよりは自分の目に届くところに置いておいたほうがいいの も理屈の上では確かではあるのだが、どことなく精神攻撃めいた不穏なものを感じなくもない。 「……まあ、なるようになるか」 今どこにいるともしれない白狩衣の少女が聞いたら、あまりのお気楽さに不安がって説教したかもしれない台 詞だった。 口から零れた言葉を無意識に追ったらしく、誘導役を買って先行していた少年がちらと振り向いた。 まだほとんど会話もしていないが、この学校の生徒だろう。どうやらただの一般人であるが、この世界につい ての話くらいは聞かせてもらおう。 ※ 音を聞きつけて学園関係者が来ないとも限らない。 見つかると絶対に面倒なことになる。 剥がれて散らばる煉瓦の群れ、どうやったのか見当もつかない地面の巨大な裂け目、戦闘用金属棒を携えた青 年戦士、そして昏睡する女の子。 「……」 ……どう考えても、青年がいろいろ不名誉な疑いを掛けられて警察にしょっぴかれていくという未来予想しか 浮かばない。特に“昏睡する女の子”あたりはそうとうマズい。 命の恩人がそんな悲惨なことになるのはさすがに忍びない。かといって、俺の口からこの事態について誰もが 納得できるように説明できる自信もなかった。 当然の成り行きとして、俺は青年に一刻も早くこの場を離れることを提案したのだった。 「ここなら……」 辿り着いたのは、仁科学園北西に広がる専用農場。 農業教育の栽培活動などに使われる菜園であるが、その向こうの未使用地域は密林となっている。 冗談でも何でもない。“密林”である。その鬱蒼たることは南米の熱帯雨林を思わせ、そこでは蔦だの食虫植 物だの怪鳥だの変な虫だのが閉じた食物連鎖を繰り広げている。……大丈夫かよ防疫的な意味で。 夜の時間帯、密林の深奥は見通しの利かない暗黒の空間へと変貌を遂げる―― などと、おどろおどろしく言っておいて何だが、さすがにそこまで深く分け入る必要はない。 精密化された機械警備が常識となっている昨今、たとえば教室に置き忘れた宿題のノートを真夜中にこっそり 回収に来るなどファンタジーもいいとこだが、学園敷地といえどさすがに校舎外までは網羅できない。こんな農 場や森林ならば尚更、監視網など布きようもないはずだった。 門あたりにはビデオカメラもあるが、職員室に出入りすることの多い俺はモニタリングの死角くらいは把握し ている。先ほどの青年の大立ち回りは、ぎりぎり範囲から外れていた。 ……ただし、蜘蛛に出くわした俺が回れ右した南門あたりは明確にアウトだ。あの尋常ならざる破壊痕を見た 教員たちが録画の映像を総ざらいでもすれば追及もあり得るかもしれない。しかしまあ、それでも俺ひとりくら いならいくらでも言い訳は立つ。 ……逃走といい隠蔽といい、もはやどこが優等生だよとツッコまれても反論できない感じだが、取り敢えず今 は慎重に行動するのが正解だろう。たまには融通が利くってところも見せないとな。 (む?) そんなことをぼんやりと考えながら密林を外から眺めていると、ふと、違和感に襲われた。 (クスノキ? こんな木あったか?) それだけではない。全体的に、密林の植生が変わっている、ような……。アマゾンみたいなところだったはず なのに、今はごくまっとうな日本の温帯温暖湿潤気候のものに見える。 そこは、どこかの鎮守の森めいて、みだりな人の侵入を拒絶する結界のような空気を孕んでもいた。 ――ぞくり 背筋を寒気が這う。 赤み掛かった月光に照らされて、いくつかの木の樹幹に古い創傷が刻まれているのが見えた。 (何かがいる) 獣だ。――いや、獣ではない。 確信に近かった。この森に入ってはいけない。命が惜しければ。 俺が見知らぬ木々の前で立ち竦んでいると、青年が「よっこしょ」と雑草の絨毯の上に女の子を降ろすのが見 えた。どこかのんきな声のおかげで緊張が緩む。 青年は息も切らしていなかった。消耗しているとはいえ男子高校生の全力疾走に付いて、金属棒と女の子を抱 えたままけっこうな距離を走ったというのに、いったいどういう体力をしているんだ? 「ここらで、いいかな」 青年は躊躇なく女の子のそばに腰を下ろし、俺にも休むように促した。 正直もう座りたいを通り越して寝たいくらいの心境だった俺は、ふたりから気持ち距離を取りつつ疲労回復を 図ることにした。 「……さっきは、ありがとうございました。助かりました」 「いいって。怪我はないか?」 「おかげさまで」 好もしい人物のようだったが、自分から自己紹介ができる雰囲気ではなかった。 「……」 「……」 何となく話題の切り出し方が分からず、会話が止んでしまう。お互い、どこまで関わっていいものやら分から ない、そんな感じだった。 かくして逃げ道を探すように、気を失ったままの少女を何とも言えない表情で覗きこむ男ふたり。ただよう激 烈な犯罪臭。 長く伸ばされた黒髪の艶に見惚れてしまう。可愛らしい花柄のワンピースにフェミニンなボレロを羽織ってい た。最近の小学生はお洒落だなぁとおっさん臭い感想を抱く。 さらに特筆するなら、彼女の首にはもうひとつ――皮革のナイフホルスターが掛かっていた。腰ではなく、首 である。まるで悪趣味なペンダントのように。 ……。 ……ナイフ? ぎょっとした俺は立ち上がって少女に近づき、武骨もいいとこな鞘の内をそっと確かめた。 納まっていたのは短剣だった。ナイフというにはやや刃渡りが長いかもしれない。 それはどう見てもマジもんの危険物だった。実用本位らしい白刃は緩やかに湾曲し、中央に謎の溝が走ってい る。最近の小学生は物騒だなぁとおっさん臭い感想をって何これ怖っ。 青年の金属棒といい、くだんのデバガメヒロインといい、俺たちの街に空前の武装ブームが到来しているのだ ろうか。治安最悪じゃねぇか。もう引っ越したい。 少女の持ち物といえば、それくらいのものだった。さすがにこの時世、女の子のポケットの中身を漁る度胸は ちょっとないが、あの蜘蛛ボディや短剣以上の凶器が出てくるとは思えない。 短剣を首飾りにした少女の唇からは、すぅすぅと微かな寝息が漏れていた。未だ目を覚ます風情はない。 ……天使の寝顔だが、騙されてはいけない。俺をさんざ追い回してくれたサディスティックなモンスターとメ ンタリティは同じだ。 この姿は人間を油断させる擬態なのだろうか? そう思うと見よ、たちまち可憐な少女もおぞましく感じられ てくるではないか。 何にせよ、 (この子を、蜘蛛をどうするか) 今はそれが最優先の懸案事項だろう。どうにかしないとまた誰かが襲われる。下手しなくても死者が出る。 目覚める前に最低でも拘束はしておかなくては危険極まりないと思うのだが、鉄の鎖ていどではあの蜘蛛は抑 えきれないだろう。……となると何も思いつかない。ダメだ俺。 いくら怪物といっても、俺自身にはこの子を殺害したりするような覚悟の持ち合わせはないのだから、ここは “異形”とやらの専門家であるらしいこの青年の判断に従うのが一番よいという気がする。どの道、ただの高校 生の身には余る。 (だがその青年は、蜘蛛を殺さなかった) どういうことなのだろう。青年は対策を知っていると期待していいのか。 何かそういう怪物を外界から隔絶する施設的なものが存在するとか、少女は今夜に限ってたまたま蜘蛛の怨念 に取り憑かれていただけで既に無害とか。考えられる可能性はいくつもある。 しかし青年の沈黙を見るに、何となくそんな雰囲気でもない。実は行き当たりばったりで、女の子に変身した からふらふら判断を保留にしているだけかもしれない。 ……難しい。 「そういえば自己紹介がまだだった。俺は坂上匠」 「先崎俊輔です」 ――来た。 自分でもどうかと思うが、「きみはもう帰っていいよ。……ああ、今日のことは誰にも言わないでくれると、 こちらとしては助かる」とか何とか、青年が事件の関係者として送り出してくれないかなーなどと俺はちょっと 待っていたのだが、特にそんなことはなかった。仁科学園の外でまで変な事件に巻きこまれる予感。 坂上匠さんは、一瞬だけどう切り出したものかと悩ましげな表情を覗かせてから、言った。 「どうやら、世界が混ざり合ってしまったらしい」 どういうことだよ。 つづく ページ最上部へ
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Beyond the school gate ※ (どうりゃいいんだ……これ……) 俺と蜘蛛との運動能力に絶対的な格差が存在するという前提を考えると、まともな鬼ごっこでは勝てない。 頭の中で仁科学園のマップを開く。 俺の現在位置は、校門校舎間を結ぶ煉瓦敷きの大通り。その南門の付近、やや西寄りの地点だ。 南門は校舎から最も遠い。 この大通りには、出会いと別れに花を添える桜の並木がある。さらにその外側は、ちょっとした人工林を挟ん で、西には広大な第一グラウンド、東にはここから近い順に第二グラウンドとテニスなどの競技専用コートと屋 内外のプール施設が敷き詰められている。 一番近いのは第一グラウンドの北にある体育館だろうが、とうに施錠されているだろう。……籠城戦は立て籠 りの態勢を整える前に食い殺されるのがおちか。 迎撃はもちろん選択肢にも入らない。 (となると) ――俺がそれに反応できなかったのは、愚にもつかない思考にかまけていたからではない。 目など離した覚えなどないのに、気づいた時には既に、蜘蛛の姿が俺の視界から、消え―― 「ッ!!」 あれこれ小賢しく考えていた自分が馬鹿に思えるほどに、その時俺が取った行動は、まったく動物的な脊髄反 射によるものだった。 手にした合成革の学生鞄を、鋭い長槍のような何かが串刺しにしていた! 今思えばそれは、自覚できない瞬 間を生きるもうひとりの俺が、食人鬼への生け贄として差し出したものだったのだろう。 死の長槍の正体が蜘蛛の“爪先”であったことを脳が理解する。交通事故にひやりとするのとは訳が違う。俺 に向けられた明確な害意を察知して、全身の皮膚が粟立つ。 ――蜘蛛の怪物が、ついに俺に牙を剥いたのだ! 驚愕と戦慄で凍結していた思考が、ようやく言語化を果たす。 鞄を捨てて脚のひと振りをどうにか受け流し、俺は我が身を翻して地を蹴る。全身の動きに火事場の馬鹿力が 乗り、今よりもっと前へと懸命に俺自身を押し続ける。 だが、これから逃げ延びるのに、人類の二本足はあまりに遅すぎた。 視界の右端。全力疾走しているはずの俺の背後から、さながら死に神の大鎌のように、するすると一条の鈍色 の槍状が伸びてゆく。 ――これは、蜘蛛の、前肢だ――!! 理解した瞬間に“俺の体が浮いていた”。大地から引き剥がされ、体重が行き場を失う感覚。 混乱。 前後不覚からどうにか我に返り、状況判断に掛かる。横から薙ぎ倒されたのだとしか思えない。咄嗟に腕を挟 んで胴を庇ったが、そのひ弱な防御ごと巨大質量に吹き飛ばされ、煉瓦敷きの通りの上にどうと倒れた。 激痛のあまり絶叫もできない。 「……ちっ……」 ……くしょうっ! 俺は悪態を吐きながら、我が身のコンディションをざっとスキャン。重傷と言えるレベルの外傷は負っていな い。ド素人のわざではあったが、どうにか受け身が間に合った。擦過傷だか摩擦熱だかで肌が焼けついている。 自分の呼吸音が尋常ではなかった。瞼が重い。意識が朦朧とし掛かっている。とんでもなく危険な兆候。 (これは、だいぶ、まずそうだ) 絶体絶命の状況を、敢えて柔らかく表現してみる。これで少しは気休めにな……らねーよ! この巨大な蜘蛛のバケモノから逃げ切れる未来のビジョンが、ひとつも頭に浮かんで来ない。 何せ二〇メートルあった隔たりを一瞬にして無に帰し、走る俺の正面に回りこみやがったのだ。一体、どうい う速さをしていやがる! 昆虫のノミが人間大になれば東京タワーを跳び越えられるという喩え話があるが、現実には百歩譲ってサイズ を大きくできたとしてもその時には当然体重も跳ね上がってしまうため、飛距離が伸びることはない。だが、こ いつの身体能力は、まさにそういう仮想の巨大昆虫のそれだ。 先刻の一撃でやられなかっただけでも、もう俺が強運としか言いようがない。 半ば無意識に、うつ伏せの腹を引き摺り、一歩でもこの処刑場から遠ざかろうとする。まるでぶきっちょな爬 虫類にでもなったかのようだな。自分を俯瞰しているもうひとりの自分が喩えて自嘲するが、そんなことしてい る場合か。 そんなすっとろい逃亡をまさか見過ごしてくれるはずもなく、蜘蛛は俺の腹の下に尖った爪先をすうと差し入 れ、ぞんざいに引っ繰り返した。 カブトムシとの戦いの敗者さながらに、あっけなく横転する。 「ぐ……うっ!?」 これが肉体的にはともかく、精神的には手痛かった。絶望がひたひたと現実味を帯びてくる。みっともない声 を恥じる余裕すらない。 仰向けに地に伏せたところで、目の前に蜘蛛の貌。いっそさっさと殺してくれと懇願したくなる。 信号機の畸形のような四つの単眼には、むしろ無邪気な子どものそれを思わせる残虐性が浮かぶ。 きちきちと打ち鳴らされる一対の毒牙は、象牙のように大きい。そういえば、クモの食事の作法は、“毒で動 けなくした獲物に消化液を注入し、体外で溶かしたものを吸う”というものだ。この怪物は、それにしてはやけ に大袈裟な“口腔”を持っているようにも見えるが。 (何だこいつ。ライオンでも丸呑みにできそうじゃないか) ……こんな時に抱く感想としては、我ながら何ともノンキにすぎた。夏休みの自由研究で昆虫を観察する小学 生かお前は。……俺か。セルフツッコミがむなしい。 蜘蛛は俺に兇相を突きつけたきり、獲物の恐怖や抵抗を愉しみに待つように沈黙した。しかしもちろん、この まま五体満足で帰す気などないに決まっている。ネコやカラスが小動物をいたぶって遊ぶようなものだ。 ――“遊ぶ”? そこでふと違和感を覚えた。 どうやら俺は、とんでもない思い違いをしてるのではないか? ――“遊ぶ”。考えてみればおかしな話だ。“昆虫やクモは遊戯などしない” 昆虫などは、ある意味では機械じみてさえいる、よほどシステマティックな生き物だ。本能という形に最適化 されたルーチンは融通が利かないが単純明快で合理的だ。 もしも、この蜘蛛が本能のみで動く怪物であるならば、俺は勝機を見出だすこともできず、第一撃によってき っちり殺されているはずだ。 けれど、俺はまだ死んでいない。麻痺毒の枷を嵌められるでもなく、全力疾走すら可能な体のままで生かされ ている。何故なら、それがこの蜘蛛の遊びだから。 そこに希望の光を見出す。 そう、こいつは“クモ”ではないのだ。クモに姿がよく似ているだけの、サディスティックなモンスターにす ぎない。 狂博士の檻から解き放たれた生物兵器であるにせよ、封印を破って里に下りた妖怪変化であるにせよ。これの 正体が、“遊び”に興じるような精神を持つ者であるならば、 ――あるいはそこに付けこむこともできる! 深呼吸ひとつで、俺は歯車を組み換える。 蜘蛛が退屈そうに俺を爪先で小突く。このモラトリアムも、どうやらそう長くはない。 まあどんな目が出るにせよ、このまま賽も振らずにジリ貧になるよりはましだ。ここは、地獄に垂らされたひ と筋の蜘蛛の糸を手繰るとしよう。 ※ 同時刻。 私立仁科学園体育館に設えられた大武道場は剣道場の一角。 そこは静謐なる空間だった。あるいは大気の中にぴんと張った一本の弦を想う者もいる。無闇に口を利くこと の躊躇われる厳粛な空気は、この場で修練を積み重ねた少年剣士たちの魂が染みついたものか。 蒸し暑いという正常な皮膚感覚すら、ここでは緊張のための空寒さの前に制圧されるだろう。 「ここは」 ぽつりと誰かが発した声が、鋼の線を弾いたように大きな広がりを持って響き渡る。たとえば、青竹を手斧で 割った小気味の良さを伴っていた。 誰か。今は竹刀を打ちこむ者もなくなって久しい時間帯であるはずだ。 誰だ。ここは扉の施錠を教諭によって確かめられた密室であるはずだ。 無人のはずの仁科学園体育館大武道場に姿を見せた何者かは、精悍な眼差しにひと掴みばかりの困惑を散らし て呟く。 「ここは……どこだ?」 青年。 まだ若さの盛りだが、立ち姿には一種達観の境地にあるような落ち着きも窺える。年の頃は二〇代の半ばと見 えた。少なくとも高校生ではない。 着古しのジーンズに縫製のしっかりしたTシャツ。飾らない服装の上からでも、その体が鍛え上げられている ことが分かった。アスリート、軍人、そういう人種を思わせる。 右手に携えるのは、金属製の棒。およそ七尺に及ぶ長さは、青年の身の丈を上回る。滑らかな痩身には叉も装 飾もない。鋼色が纏う“物質としての確かさ”がその最大の特徴と言えるか。 ――ここはどこだ? 何があった? 青年は今一度、我が身が陥った、わけのわからない事態について考察を試みる。 最後の記憶は夜明け前。ひと仕事を終えて仮眠を執ろうと、自室の床に横たわったところだったはずだ。何か と身の回りの世話を焼こうとする白狩衣の娘を遠ざけて、何の気兼ねなく体を休めるつもりだった。 (そこへ、不意に耳のそばで雑音がして跳ね起きた。蠅の羽音に似た微振動) 思い出すだけでも不快になる。あれは何だったのだろう。“そういう音を発するもの”に、心当たりがないで はない。たとえば、手の金属の棒が粉砕すべき異形のものどものうちの数種であるとか。 (しかし、あれは異形じゃなかった。 もっと大きなスケールで、根源的な変化があった感じだ。……存外、“またぞろ世界のいくつかでも重なり合 った”か?) いわゆる“一般人”には理解しかねることを当然のように心のうちに並べてから、青年はのんびりと歩き出し た。足の先が向かうのは体育館の出入り口だ。錠前はもちろん内側から開けられる。 右肩には重さの頼もしい金属の棒。左手には運よくそばに転がっていた履き物の左右。それが、異世界にやっ て来た彼の荷物の全てだった。 (ここにいても仕方がない。外に出て状況確認といこう) うまくすれば仲間と合流できるかもしれない。 磨き上げられた板張りの床を、窓から射しこんだ月光が舐めてゆく。 ※ 蜘蛛の小突く力を利用して立ち上がる。 意表を突き、しかし下手に刺激しないように自然な流れに乗る。俺だって、伊達にどこかの変態少女の不意打 ちハグやちゃっかりキスを躱し続けてきたわけじゃない(伊達とかそういう問題じゃないけど……)。 蜘蛛は出方を窺うように、無機質な目で俺を見ている。……もうクモの視力がどうのこうのなんてことは忘れ よう。希望的観測としても虫のいい話だ。 (逃げ場はひとつ) 人工林以外、有り得ない。 あそこは“林”を名乗るには東西の奥行きが薄いが、木々の間隔がやや狭い。俺なら走ってでも通れるが、目 測した限りあの蜘蛛は体を横にしたって確実に閊(つか)える。もし蜘蛛が、樹木を粉砕してでも獲物を追うな どというクモらしからぬ発想に至ったとしても、時間稼ぎにはなるだろう。 俺は蜘蛛から目を離さず、摺り足でするすると滑って位置を調整。このまま一動作で人工林に跳びこめるまで 距離を削ることができればいいのだが―― そんな祈りも空しく、蜘蛛の姿がまた掻き消える。 (くそがっ!) 摺り足を止め、俺は目的地に向けて死に物狂いで走った。 蜘蛛は俺の逃走経路を読んで割りこんでいた。もはや瞬間移動というべき速さ。 頭蓋骨を一撃で噛み砕くであろう牙が、ぐいとこれ見よがしに突き出される。ヘビに睨まれたカエルならここ で全てを諦めるだろう。本能と本能の歯車は噛み合う。 だが! ――それがただの“威し”であると見抜く だから俺は制動ではなく、最加速を掛ける。 蜘蛛が立ち塞がるなら、背中を蹴って跳び越える。体構造上では背中は蜘蛛の爪牙が及び難いはずではあるが、 その反応速度と敏捷性を考えれば勝算などあるわけもない。ここは博打に出るしかない。遊びと遊びの歯車もま た噛み合うのだと信じて走る。 スニーカーで固めた俺の右足が、蜘蛛の首あたりに着地。 ――踏破――!! 蜘蛛の背中は異様に硬く、反動で足首に痛みすら覚えた。――知ったことか! (ここだ!) 並ぶ木々のうち、おあつらえ向きの株に目を付け、爪先から蜘蛛の首に全体重を射ち出す。 樹木と樹木の狭間。それが生還への門だ。 制服を削るようにしてすり抜ける。 前転して落下の衝撃を殺し、ひと足先に成功を確信。 数瞬遅れで二本の樹木に巨大蜘蛛が激突していた。 繊維の破砕される轟音に胆が冷える。あるいはそれが蜘蛛の渾身の突進であるならば、強引に木をへし折って 突破できたであろうことは疑いようがない。 だが、“遊び”の体当たりではわずかに足りなかった。 力強い樹幹に弾かれて、蜘蛛はそこを一発で抜けられなかった。 一度足を止めざる得なかった。 ――“一度”。そう、一度で充分 さて。 ここで突進の運動エネルギーの全てを消費してしまったクモはどうするか? 後退して再び体当たりするか、怪力でこじ開けて押し通るか。……どちらもスペックの上ではやってのけそう ではある。というかやってのけるだろう。 しかし、どちらにせよ、俺はその時間に第二の“門”を潜り抜ければよい。 「どうせ遊ぶなら、もっと真剣にやろうじゃないか。――なぁ?」 背後に投げ掛けた格好つけの台詞は、息も絶え絶えであまり決まっていなかった。 ――木を舐めてはいけない 樹木は、セルロースとリグニンによる鉄筋コンクリートにも喩えられる、極めて頑丈な構造体だ。たとえば街 路樹の根本に自動車で突っこんでも、倒壊させることは容易ではない。 それに一口に“木”といっても、重さや堅さといった木質から、展開していく根の形状まで、それらはまった く多様性に富んだ生き物だ。もし「以前は倒せたから」という怪物なりの学習があっても、種類を見極めずに舐 めて掛かると思わぬ苦闘を強いられることもある。 ……まぁ、結果論でうまくいったから、こうして余裕ぶって解説なんぞできているわけなんだが。 余計な考えもそこそこに、俺は人工林を駆け抜ける。 (――閑かだ。いや、あの後輩ではなく) どうやら、蜘蛛は追って来ていない。何せあれだけの巨体だ、密集した木々の間を通り抜けようとしていれば 物音がないはずがないからだ。まだ、俺を狩り出すことに血眼になってまではいないらしい。 林間の暗がりにまぎれ、俺はひと息吐く。夜の世界でも一層黒々とした木陰に腰を下ろした。血流が、耳の奥 をごんごんと叩いていた。 実のところ、そこまで長距離を移動したわけではない。昼間ならそろそろ進行方向に体育館が見えてくるあた りだろうか。 このまま蜘蛛が諦めてくれればそれでよし。俺の逃走ルートを予測して迂回するかもしれないが、お生憎だっ たな、俺はもうしばらくここを動く気はない。 位置を特定されて一帯の木々ごと薙ぎ倒されでもしたら打つ手がないが、俺はその前に学園と官憲に通報すれ ばいい。錯乱した演技で「イノシシのような強暴な獣に襲われた」とでも言い張れば、警察官も拳銃の一挺くら いは携行して来てくれるだろう。 (拳銃) あの戦車じみた怪物を殺すには、あまりに頼りない武器にも思える。 震える手で携帯電話をばちりと開く。今はこれが命綱だ。 光源のディスプレイを直視しないように注意しながら、まず【電話帳】から【私立仁科学園高等部】を呼び出 す。知らずに出歩いた教職員が、翌朝死体となって発見されるなんて事態は避けたい。まずはそちらの安全を確 保するべきだろう。日頃からあちこちで信用を売っておいたから、いきなり狼少年扱いはされないはずだ。 (それにしても、いよいよ大事になってきたものだ) 嘆息しながら、俺は携帯電話を耳に当てる。 ――コール音がない 「何っ」 慌ててアンテナのようなアイコンに注目。 電波障害? ――馬鹿な、ここは僻地のトンネルでも何でもないぞ! 藁にすがる思いで一一〇番に掛ける。……やはり繋がらない。 「まじか」 愕然とする。 悠長に電波の回復を待つか? しかし俺がこのまま一夜を明かすようなことになれば、何も知らずに登校して きた誰かが食い殺されるかもしれない。そんなのは、俺はごめんだ。 ならば、さらに人工林の中を北上して校舎内に入るか、もしくは西門を抜けるか。いっそ南下してもいいが、 心理的にはもうイヤだ。……どちらにせよ、蜘蛛の居場所が分からないのだから同じっちゃ同じだけど。 (…………) 悩ましい。 悩ましいが、こんなのもはや答えはひとつしかない。 俺は蜘蛛の見えない影に怯えながら、気持ち北北西に針路を取った。 ※ ページ最上部へ
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創発シェアワスレクロス企画(仮) 現行スレ http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/3274/1320313119/ 参加表明一覧 投下作品まとめ (ぷろとたいぷ版) Beyond the school gate タイトル未定 ◆KazZxBP5Rc 月下の魔剣~獣~ 結縁 魔剣とロミオ 1レスネタ集 ページ最上部へ